婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「うわ~ なんか、昼ドラみたい…」
翌日、公園で勇斗達を遊ばせながら、美咲ちゃんママに電話の一件を話したら、そんな言葉が返ってきた。
「いやいや 全然そんなんじゃないよ 圭司がただの間違い電話をひとりで大騒ぎしてるだけなんだから…今日なんてね、朝から何度もしつこくラインしてくるんだよ ほら これ見て」
私はため息をつきながら、美咲ちゃんママに圭司とのラインの画面を見せた。
『その後、大丈夫?』
『大丈夫』
『あいつから電話きてない?』
『きてない』
『何か変わったことは?』
『ない』
『知らない番号の電話には、絶対出ちゃダメだから』
『分かってる』
「ふーん なるほどね~ でも、こんなに心配してくれてるんだから、勇斗くんママももう少しちゃんと返事してあげればいいのに… こんな素っ気ないのじゃなくて」
「だって この一連のやり取りを朝から三回も繰り返してるんだから いい加減、面倒くさくなってきて…」
「ハハ でも、それだけ、愛されてるってことなんだから~ あれ? なんか、電話かかってきたよ」
美咲ちゃんママはそう言って、私に携帯を返してきた。
「あっ ほんとだ 誰だろう?」
確かめようとして、画面を見ると非通知の文字が…
「えっ 非通知…」
ドクンと大きく心臓が鳴った。
昨日、家に電話してきた人と同じ人だろうか…
松井くんは新しい携帯番号なんて知らない筈だから、松井くんではないとして…
えっ 誰?
非通知でかけてくる人なんて、全然心当たりないし…
なんだか、とても気持ち悪い
一層のこと、誰なのかをつきとめてしまいたい気もするけれど…
圭司にも出るなって言われているし…
「非通知でしょ? 出ない方がいいよ」
横から、美咲ちゃんママが心配そうに覗き込んだ。
「うん そうだよね…」
私は思いとどまって、携帯から手を離した。
しばらくして、携帯の着信音が鳴り止んだ。
「ねえ 旦那さんに連絡した方がいいんじゃない?」
「う~ん でも、今、報告したら、圭司、心配して帰って来ちゃいそうだから、家に帰ってきてからにするよ あっ じゃあ そろそろ 私、帰ろっかな…」
「うん 分かった 気をつけて帰ってね」
私は美咲ちゃんママに別れを告げ、砂場で遊んでいた勇斗をベビーカーへと乗せた。
公園の帰り道、私の頭の中はさっきの電話のことでいっぱいだった。
昨日の電話も、ただの間違い電話なんかじゃないのかもしれない…
圭司も、意図的に電話を切られたって言っていたし
嫌がらせとかなのかな?
今どき非通知でかけてくること自体、不自然だ。
そう考えると、なんだか急に怖くなってきた。
それに、何となくさっきから、後をつけられているような気配も感じる。
気のせいかな
怖いと思い始めたから、そう感じるのかな
私はマンションの前で足を止め、思い切って後ろを振り返ってみた。
けれど、見渡したところ、特に怪しい人物も見当たらなかった。
やっぱり、気のせいか…
私はふーと大きく息を吐いて、そのままマンションへと入って行った。