婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
あっという間に哺乳瓶は空になった。
背中をさすりながら、ゲップをさせると、勇斗は急にぐずり始めた。
「ふぎゃあー ふぎゃあー」
あ… 始まってしまった。
今から、夕食の支度をしようと思ってたんだけどな…
「は~い よしよし いい子だから」
勇斗を抱き上げ、背中をポンポンと叩きながら、必死であやしてはみたものの、今日の勇斗は、なかなか泣き止んでくれない。
気づくと、二時間近く経っていた。
どうしちゃったの 勇斗…
眠いのに、眠れないの?
最近、夜泣きもするし、何か不安なの?
泣いてるだけじゃ、ママには何も分からないよ…
ううん、きっと分かってあげられないママが未熟なんだよね…
マイナスの感情に押しつぶされて、涙がこぼれそうになった時、リビングのドアが開いて、スーツ姿の圭司が入ってきた。
「ただいま おー 今日はまた、随分派手に泣いてるな~ 勇斗は~」
圭司は私の腕から勇斗を抱き上げ、笑いながらそう言った。
「おかえりなさい 圭司… ごめんね ずっと勇斗に泣かれてて、ご飯何も出来てない…」
「あー いいよ、いいよ これじゃ大変だったよな… こら 勇斗 おまえもいい加減泣き止めって ほら 口開けてごらん…」
圭司はそう言って、泣いている勇斗の口におしゃぶりをスッと差し込んだ。
すると、さっきまでの泣き声はピタリと止んで、勇斗は咥えたおしゃぶりを大人しくチュパチュパと動かし始めた。
「帰りに、ドラッグストアで買ってきたんだよ 最近、夜泣きも始まったしさ… このままじゃ、さすがに俺達もキツいだろ?」
圭司は泣き止んだ勇斗を見て、満足げに言った。
「うん でも… いいのかな… おしゃぶりなんて…」
「え? どうして?」
圭司は私の言葉に、眉をひそめた。
「あ 前にね、おしゃぶりは良くないって、ネットの記事で読んだから…」
「何で良くないんだって?」
あれ 何でだったかな…
えーと そうそう… 確か
「歯並びが悪くなるんだよ」
「こいつ、歯、あったっけ…?」
「ない…ね」
「じゃあ、まだ、今は気にすることないじゃない?」
「あ でも、依存性がでるからとか… あと、そうそう 赤ちゃんが母親に要求を伝えようとする力を奪っちゃうんだって… おしゃぶりは親が楽するための道具なんだって書いてあったよ…」
そう
私はこれを読んで、絶対おしゃぶりは与えちゃいけないと思ったのだ。