婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

スーパーに着いた途端、勇斗はお菓子売り場へと走り出して行った。

「あー もう 待ってよ 勇斗~」

たたんだベビーカーをお店の隅に置いて、私は買い物カートを押しながら、急いで勇斗の後を追いかけた。

このスーパーへは毎日のように来ているから、勇斗も自分の大好きなチョコぴーのありかを、ちゃんと分かっているのだ。

だから、毎回、私もこうして勇斗の後を追いかけさせられている…

けれど…

「あれ? いない…」

どういう訳か、今日はお菓子売り場に勇斗がいなかった。

おかしいな…
ここに向かった筈なんだけどな

「勇斗~ どこにいるの~?」

私は勇斗の名を叫びながら、必死に店内を探し回った。

どこに行っちゃったの 勇斗…
勇斗がいなくなってから、かれこれ20分以上経っている。

このまま見つからなかったらどうしよう
心臓がバクバクと音を立て始め、とてつもない恐怖心が襲ってきた。

圭司 助けて…
私は震える手でラインを送った。

『勇斗がいなくなっちゃった… 誘拐だったらどうしよう』

すぐに圭司から着信がきた。

『もしもし なつ? 大丈夫?』

圭司の声で、堪えていた涙が一気に溢れそうになる。

『あっ あのね 勇斗がね… スーパーの中でいなくなっちゃって… お店の中、探したんだけど、全然みつかんなくって! どうしよう 圭司…』

『なつ 落ち着いて… 店の中は全部探したの?』

『うん 何度もグルグル回ったけど…』

『トイレは?』

『そっか! トイレはまだ、見てない…トイレ探してくる』

『あっ なつ 電話はこのままな…』

『分かった』

私は携帯を持ったまま、トイレへと走り出した。


「あっ!! 勇斗!」

角を曲がったところで、勇斗の姿を発見した。

勇斗はトイレの前のベンチに、ひとりでちょこんとすわっていた。

私は一気に緊張が解け、ホッとした表情を浮かべながら勇斗の元へと駈け寄った。

『圭司 ありがとう 勇斗見つかった… トイレの前にいたから もう だいじょ…う… あー!! 勇斗 それダメ! それ食べちゃダメ-!!』

私は勇斗の手を思い切りはたいていた。

「うえーん うえーん」

当然勇斗は大泣きし、私もパニック状態だ。
落とした携帯から、圭司の慌てた声が聞こえてきた。

『どうした なつ! 何が起こった? なつ?』

私はハッとして、携帯を拾い上げた。

『えっと、たい焼き…』

『えっ?……たい焼き?』

『勇斗がたい焼き食べてた…』

『は?』

そう
勇斗はベンチに座りながら、一人でたい焼きを頬ばっていたのだ。

















< 42 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop