婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
………
「じゃあ、昨日から誰かにつけられていたかもしれないってこと?」
圭司の問いかけに、私はコクリと頷いた。
私はリビングのソファーに腰掛けながら、自分を落ち着かせるように目の前にあるミルクティーを一口飲んだ。
あの後、血相を変えて帰ってきた圭司は、まだスーツ姿のままだ。
私が誰かにつけられていたことを打ち明けると、途端に険しい顔で眉を潜めた。
「昨日はね、気のせいかなって思ってたんだけど… 今、思えば、やっぱり後をつけられてたんだと思う 今日もね、信号待ちの時、勇斗が誰かに手を振っていたの 勇斗は自分から振るような子じゃないから、誰かに振られたんだと思うんだけど… その後も、何となく後ろに気配を感じて…」
「それで、その後、スーパーで勇斗がいなくなって、一人でたい焼きを食ってたって訳か…」
「うん」
圭司はそっかと呟くと、深いため息を漏らした。
「見つけた時、私 心臓止まるかと思った たい焼きに毒でも入ってたらどうしようって… 普通のたい焼きだったから良かったけど、それでも誰が何の目的で勇斗にたい焼きなんて与えたのかって考えたら怖くなって…でも、警察の人は全然取り合ってくれないし…」
「事件性はないって、言われたんだろ?」
「うん、迷子の勇斗を慰めようとして、好意で誰かがあげただけじゃないかって… 後をつけられてたこともちゃんと話したんだけど、テレビドラマの見すぎですよ…なんて笑われて… でもね、勇斗がお菓子売り場にいなかったのは不自然だったし、迷子になったとも思えないの きっと、勇斗は誘拐されかけたんだよ! 圭司もそう思うでしょ!?」
私は圭司の腕を掴みながら、大きな声でそう言った。
「なつ 落ち着いて… 勇斗は何て言ってたの? たい焼きは誰に貰ったって?」
「あー それがね…」
私はソファーで眠る勇斗の顔をチラリと見た。
「何度聞いても、『パッパ~』としか答えなくて…」
「えっ 俺って言ってんのか… なんだ、そりゃ…」
圭司は暫く考え込んだ。
「ねえ 圭司… やっぱり松井くんかもしれないね… きっと、松井くんが私の後つけたり、勇斗にたい焼きを食べさせたりして、ストーカーみたいなことをしてるんだよ それで自分のことも勇斗にパパだって言ったんじゃないかな~? だから、勇斗もパッパ~って」
「なつ… 俺は松井じゃないと思う…」
私の言葉を遮って、圭司がそう言った。