婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
ママ友
圭司とおじ様が和解してから、ちょうど1年…
2歳半になった勇斗はますます可愛いい盛りとなり、おじ様も勇斗の顔見たさに、ちょくちょく訪ねてくるようになった。
ピンポーン
「あっ おじーちゃん…だ」
朝から、おじ様が来るのを心待ちにしていた勇斗が、バタバタと玄関に駆け出していった。
「いらっしゃい お父さん…」
私がドアを開けると、玩具の箱を抱えたおじ様がニコニコした顔で立っていた。
「いや~ なつさん こんにちは。おー 勇斗も出迎えてくれたのか~ ありがとな~ じゃあ、おじいちゃんがいい物あげような」
おじ様は勇斗の頭をひと撫ですると、プレゼントだよと持っていた箱を差し出した。
「うわ~ これ、勇斗が欲しがってたサクレンジャーの合体ロボットじゃな~い よかったね~ 勇斗 おじいちゃんにありがとうは?」
「あいがとう…」
勇斗は嬉しそうに受け取ると、箱を抱えてリビングへとかけていった。
「お父さん すいません… お言葉に甘えてしまって」
実はおじ様から、勇斗が喜ぶ玩具を教えてくれと言われて、こっそりリクエストしていたのだ。
「いやいや、いいんだよ… 勇斗の喜ぶ顔を見るのが、私の生き甲斐なんだからね…」
ワハハと陽気に笑いながら、おじ様はリビングへと入っていった。
「おー 圭司 元気にしてたか?」
「何言ってんだよ 二週間前に会ったばっかりだろ… ったく、人ってここまで変わるもんなんだな… 昔はろくに家にも寄りつかず、我が子に玩具なんて買ったためしもなかったくせにな…」
圭司は勇斗と一緒にサクレンジャーを箱から出しながら、嫌みっぽくそう言った。
おじ様は苦笑いを浮かべて、バツが悪そうに「悪かったよ」と圭司に頭を下げていた。
その後、たっぷり勇斗の相手をしてくれたおじ様は、いつものように持参してきた日本酒を飲みながら一緒に夕食を食べて、ご機嫌な様子でタクシーに乗って帰って行った。
…………
「ハハ 勇斗 よっぽど、この玩具が気に入ったんだな」
サクレンジャーを大事そうに抱えて眠る勇斗を見て、圭司がクスリと笑った。
「うん 美咲ちゃんのお兄ちゃんが持っててね、前に一度貸してもらったの… 勇斗、それからずっと欲しがってたから…」
「そっか…」
圭司がベッドの中に入ってきた。
「因みに勇斗はサクレンジャーのレッドが好きなんだよ」
「ふーん なつは?」
「私はやっぱりブルーかな… って…あっ あの あくまで色の話だから…ね」
なんて、不自然な言い訳をしていると、圭司がスマホの検索を始めた。
「ふーん サクレンジャーのブルーは、今、ブレイク中のイケメン俳優、加藤瞬、21才…か へー なつってこういうのが好みなんだ 俺とは全然タイプ違うけどね…」
加藤瞬のプロフィール画像を見ながら、圭司は不機嫌そうにブツブツと呟いた。
「いやっ だから別に瞬くんが好きって訳じゃ…」
「瞬くん?」
圭司の眉がピクッと動いた。
「あっ えっと…」
「瞬くんね~」
もういいや…
今まで圭司に隠してきたけれど、別にテレビの中のイケメン俳優を好きだからって、浮気してる訳じゃあるまいし…
「いいじゃない 私が瞬くんのファンだって… 今、ママ達の間で、瞬くん、凄い人気なんだから~」
ちょっと開き直って、そう言うと…
「あっそ 別にいいよ… 俺だって好きな芸能人くらいいるし…」
圭司は素っ気なくそう言うと、プイっと背中を向けてしまった。
「えっ 誰? 圭司の好きな芸能人って誰なの?」
思わず、圭司の顔を覗き込む私…
そんなの今まで一度も聞いたことがない…
「モデルのハルだよ… あの子、めちゃめちゃ俺のタイプ…」
「えっ…」
「おやすみ…」
「あっ…」
圭司は私に背中を向けたまま、目を閉じてさっさと眠ってしまった。
モデルのハルがめちゃめちゃタイプって…
何よ!
それこそ、私と全然タイプ違うじゃない!
その夜、私達はお互いに背中を向けて眠りについた。