婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
まさか、本人じゃ…ない…よね?
モデルのハルに子供なんている訳ないし…
ただのそっくりさんなんだろうけれど…
それにしても、よく似てる
マジマジと彼女の顔を見つめていると…
「おい… なつ」
圭司に肘をつつかれた。
「あっ ごっ ごめんなさい お綺麗だなって…つい、見とれてしまって…」
「えっ… いえいえ、そんな…」
私の言葉に戸惑う彼女
なんだか、へんな空気にしてしまったような…
「僕、お名前は?」
そんな中、圭司はしゃがんで男の子に声をかけた。
「永岡 悠真」
男の子は、元気な声でハッキリと答えた。
「そう 悠真くんか… いくつ?」
「ぼく、2才!」
「そっか ちゃんと言えて偉いな…」
圭司はそう言って、男の子の頭をよしよしと撫でた。
「うちにも悠真くんと同じ2才の男の子がいるんだけど、仲良くしてくれるかな?」
「うん!」
「悠真 良かったね~ 悠真も新しいお友達、欲しかったんだもんね! あの~ ぜひ、宜しくお願いします~」
悠真くんのママが、嬉しそうに頭を下げた。
「いえいえ こちらこそ… なつ 勇斗、連れてきて」
「えっ あー うん」
圭司に言われてリビングへと向かったけれど、勇斗はサクレンジャーを持ったままソファーの後ろに隠れていた。
何となく、予想はしていたけれど…
「勇斗~ 今ね、勇斗とお友達になりたいっていう男の子がきてるんだけど… ちょっと会ってみない?」
勇斗は黙ったまま首をブンブンと横に振った。
だよね…
さて、どうしたものか…
「でもね、すご~く、優しそうな男の子だよ? 玄関に来てるから行こっ?」
私は勇斗の手を取って、立ち上がらせようとしたのだけど…
「ヤダっ」
勇斗は私の手を払いのけた。
「勇斗~ そんなこと言ってたら、勇斗はいつまでも男の子のお友達出来ないよ~?」
「………いりゃない」
「でも、男の子のお友達できたら、一緒にサクレンジャーごっことかできて楽しいかもよ?」
「………こわされちゃう」
ぎゅっとサクレンジャーを握りしめる勇斗
そっか…
やっぱり、トラウマになっちゃったか…
「あー じゃあさ、壊すような乱暴な子なのかどうかママと一緒に見に行こうよ ね? 勇斗だって、仲よく遊べるお友達なら欲しいでしょ?」
「う~ん」
「ほら おいで 勇斗と仲よく遊べるお友達なのか、ママもちゃ~んと見てあげるから」
「………うん」
「よし!」
ようやく首を立てに振った勇斗を連れて、玄関へと向かったのだけれど…
「あれ…?」
もう、玄関に永岡さん親子はいなかった。
「あー 今、帰ったとこ… 向こうも忙しいみたいだから…」
「そっか 残念… せっかく、勇斗もその気になったんだけどな…」
「あっ でも、その代わり、明日のサクラ幼稚園の運動会に誘ったから…」
「そうなの?」
「うん とりあえず奥さんとライン交換しといたから 後で、なつから明日の時間とか連絡してあげなよ 結構、気さくそうな人だったから、なつも仲よくなれるといいな」
「えっ…」
携帯を片手にニコリと笑う圭司を見て、なんだか無性に腹が立った。
「へー あんな短い時間に、もう奥さんとラインの交換までしたんだ~? なんか、その辺のナンパ男よりも手際いいよね あっ あの奥さんが、モデルのハルに似てたからだったりして~ めちゃめちゃタイプなんだもんね」
ついつい嫌みたっぷりに、そんな言葉を口走ってしまった…
「は? 何言ってんの? 俺がここまでしたのは、勇斗となつの為に決まってるだろ? 何バカなこと言ってんだよ だいたい、俺はハルの顔だって知らないんだけど… つまんない言いがかりはやめてくれる?」
「ごっ ごめん… 私」
確かにその通りな訳で…
くだらないヤキモチを妬いた私が悪いのだ。
ダメだな…私
ちゃんと勇斗のことを考えてたつもりだったのに…
「大丈夫だよ 俺、ハルなんて全然タイプじゃなかったから… ほら、もう、そんな顔すんな 勇斗まで変な顔してるぞ…」
圭司が私の頭をポンと優しく叩いた。
ハッとして勇斗を見れば、今にも泣き出しそうな顔で私を見ていた。
「あっ あのね 勇斗、お友達ね、明日の運動会に一緒に行くんだって~ 頑張って会ってみようね~」
コクリと頷く勇斗を抱き上げ、私はにっこり微笑んだ。