桜色トライアングル
試合観戦




あたしは大好きな彼を見つめながら、ぎゅっと胸の前で手を握りしめていた。


あたしの祈りが届いたのか、いや、彼の実力か。


彼の打ったシュートが綺麗にゴールネットに吸い込まれた。


その瞬間、ピピーっと鳴るホイッスル。


よっしゃ、とこっちにまで聞こえてくる声で喜ぶ彼に、あたしまで嬉しくなった。


3対2、彼の――私達の高校の勝ちだ。



「桜!やったね、海希くんゴール2本も決めたじゃん!」


隣で一緒に試合観戦していた親友の真姫も、自分のことのようにぴょんぴょん跳ねて嬉しそう。


あたしはといえば…

「うぅ~っ、カッコよすぎるよぅ、どうしよう真姫~っ」


「ちょ、アンタなんで泣きそうなの」


真姫によしよし、と頭を撫でられながら、また彼を見つめる。


あたしの好きな人…茅野 海希くんは、サッカー部のエース。


おまけに爽やかでカッコよくて、飾らない性格で男女共に友達の多い人。

そんな人気者の彼に想いを寄せている人は、少なくない。



あのサラサラと風に揺れる柔らかそうな茶髪を、何度撫でたいと思ったことか…


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