桜色トライアングル
どんな人かと恐る恐る顔を上げると。
「なにしてんの桜。びしょびしょじゃん」
ちょっと困ったような顔をした海希くんが立っていた。
こんな恥ずかしいところを見られちゃうなんて。
「あ、えと、傘持ってくるの忘れちゃって」
海希くん、普通に話してくれてる!
あんなに悩んだのが嘘みたいなぐらい。
あたしは内心ホッとしながら、海希くんを見上げる。
「バカだな~、風邪引くぞ?ちょっとこれ持って」
渡されたのは海希くんが差していた、透明なビニール傘。
さすが男子が使うだけあって、大きい。
海希くんはリュックをガサゴソとして、タオルを取り出した。
その間あたしは、海希くんが濡れないように精一杯背伸びして傘の下に入れていた。
けど、ちょっと濡れちゃったかな?