桜色トライアングル
「ん、ありがと。これ使いな」
傘を返すと同時に、ふわりと頭にかけられるタオル。
あ、海希くんの匂いがする。
「え、いいの?部活で使うんじゃ…」
「いーんだよ。桜が風邪引く方がやだわ」
くすくすといつものように笑いながら、タオルごとあたしの頭を動かす。
「ありがと…」
さらっと言われたけど、"桜が風邪引く方がやだわ"、ってなんかちょっと嬉しい。
あたしのこと心配してくれたんだなって。
「あ、…てかさ」
あたしは海希くんの傘に入れてもらって、歩き出していると、海希くんが気まずそうな声を出した。
「なに?」
「昨日、変な態度とって悪かったな」
変な態度…って、やっぱり意識して避けられてたんだ。
「あ、えぇと…」
なんて返事していいかわからなくて、視線を泳がせていると、海希くんが口を開いた。
「俺もよくわかんねぇんだけど…、なんか、ちょっとな。うん。まぁ、とりあえずごめんな」