桜色トライアングル



ごくっ、と思わず喉を鳴らしてしまった。


ふんわりと柔らかい雰囲気を放ちながら、それでいてきっちりとしたイケメンに見える。


あのときは遠くてわからなかったけど、この先輩が人気なのは頷けた。


黒髪の癖っ毛が、どこか黒猫を思わせる、そんな人。


「君が桜ちゃん?ちっちゃいな」


くすり、と笑うその姿さえ妖艶で様になっている。


ううん、あたしは海希くん一筋だしっ。

きゅんとかしてない。

素敵だなとは思うけどやっぱり海希くんが好きだしっ。


なんて、頭のなかで考えてブンブンと首を振ってそんな考えを追い出す。


するとそこで、奈未ちゃんが思わぬ行動に出た。


「あっ、先輩~、私、忘れ物しちゃったんで、桜ちゃんと二人で帰ってください。ではさよならっ」


「うぇぇ!?」


ぴゅんっ、とすごい早さで校舎まで戻っていく奈未ちゃん。

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