桜色トライアングル



迫られると、下がりたくなるのが性というもの。


あたしもそれに従い、下がっていたんだけど、すぐにコンクリートの壁に背中が付いてしまった。


「ほら、逃げないで」


「…うっ…?」


壁に手を付いて、上からあたしを囲むように見つめてくる。


こ、これは、世に言う壁ドンっ…!?


ななな、なんで!なにこれ!?


「答えないと…味見しちゃうよ」


するり、と頬を撫でられて、だんだん顔が赤くなる。


こんなの、好きじゃなくてもドキドキしちゃうよ。


ぎゅっ、と目を瞑っていると、耳元で声がする。


「いいの?好きな人より先に君に触…」


「かっ、茅野、海希くんです!」


この桃色空間に耐えきれなくて、仕方なく海希くんの名を口にする。

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