桜色トライアングル
すると、あたしの頬を撫でていた動きを止める先輩。
おそるおそる目を開けると、少しびっくりしたような表情で、先輩が固まっていた。
「茅野…海希…」
暗い表情でぼそっと呟いたと思ったら、一瞬で会ったときの表情のように柔らかいものに戻った。
「そっか、そうなんだね」
「…?」
なんだろう…、海希くんのことを知ってるの?
ううん、ただ知ってるというより、何か知ってるような顔をしていた。
そもそも、なんであたしの好きな人をそんなに知りたがるの?
「…ん~、ちょっと君を送れなくなったな。一人で帰れる?」
申し訳なさそうに笑い、あたしの頭を撫でるその姿が誰かと重なる。
「あ、大丈夫ですよ」
「うん、それじゃあ気を付けてね」