桜色トライアングル
急に黙った俺を不審に思ったのか、桜が見上げてくる。
天然上目遣い…っ、耐えろ俺。
「え、あ、あぁ、駐車場行くか」
動揺を表に出さないように、さっさとカバンを持って保健室を出る。
廊下は電気が消されていて真っ暗だけど、下駄箱ぐらいには行けるだろう。
桜が後ろに付いてくるのを確認して、そのまま歩き続ける。
「か、海希くん、」
「どうした?」
気のせいか、服の裾が引っ張られているような。
「なんか暗いところダメかも。さっきまでいたのに」
さっきまでいたから、じゃないか?
そりゃあんな暗いところに閉じ込められたら、暗闇が怖くもなるだろ。
俺は無言で、裾を引っ張っていた桜の手を外して、握り締めた。
「大丈夫だから、な?早く家帰りたいだろ?」
「…うん、へへ…」