ハツカレ
「夢優ちゃん?どうしたん?」
心配そうに覗き込む彼に
必死に作り笑顔を浮かべて大丈夫だよと誤魔化した。
次の日のお稽古を済ませた慎くんと拓ちゃんと合流し、夜景を見に行く事になった。
もちろん、後部座席には私と拓ちゃん
運転席にはお姉ちゃん、助手席には慎くん
これがいつもの定位置になりつつあった。
車がカーブを曲がる時、ふと拓ちゃんと手が重なってしまった。
『ごめ…』
"ごめん"そう言いたかったのに
その言葉は出なかった。