ハツカレ
私が乗るとすぐに車は走り出し、
慎くんとは何度か会ったことはあったんだけど隣の彼に人見知りした私は何も話せず無言でお姉ちゃんの運転に身を任せていた。
しばらくして車が止まり、
外を見るとそこには砂浜があった。
『…は?』
こんな寒い真冬の夜に海ですか…
慎くんの職業は舞台役者で、
舞台を見に行った時か、月に1度の休みの時にしか会えないらしい。
___これは慎くんと離れられないでいるパターンだ…
嫌な予感がしたので、とりあえず私は無言を貫き通す必殺技を使った。
が、お姉ちゃんに必殺技は効かないらしく…
ピコン♪ピコン♪
静かな車内に3件のLINEの通知音が響いた
"姉:20分くらい散歩しておいで?"
"姉:隣の子、拓ちゃんって言ってアンタの2個年下で私のダーリンと同じ仕事してるから仲良くなれると思うよ"
"姉:てか、仲良くしなさい"
私がそれを読んだタイミングを見計らって、私と拓ちゃんというらしい隣の彼にコートとホットココアを持たせると
「早く行け」と言わんばかりの視線を投げてきた。