ねぇ、運命って信じる?
△▼△▼△▼△▼△▼△ side美羽
それきり黙り込んでしまった彼…でもまだ聞きたいことが残っている。
「あの最後に聞いてもいいですか?…私が嫌いになって避けていたわけじゃなくて。事故に遭って、それで突然いなくなった?…じゃあなんで私との物を全部捨てていったの?」
涙がこぼれ落ちる寸前…
「…それはっ!違う。事故の後しばらく入院していて、引っ越しは人に任せたら、必要最低限の物以外処分するように頼んだみたいで…それに事故で携帯も壊れて誰にも連絡できなかったんだ。…それにこの前昔のアパートを訪ねたんだ。そこで管理人さんに話を聞くまで自分の荷物がそんなに捨てられていたなんて知らなかったんだ。…だから美羽が他の人と指輪を買っていたとしても俺に何かを言う資格は無い…それに今まで御曹司だと黙っていたのは本当の俺を見てくれる人が欲しかったから。ごめん。」
そう話す彼はどこか寂しげで胸が締め付けられた。…なんとなくわかる。私でさえ田中みたいなのが出てきて困ったのに彼ぐらい有名な企業の御曹司ならほっておかないだろう。
…彼は何も知らなかった。私に恋人ができたと誤解したから…他の人に目を向けたんだ。これでいい。もう満足しなくちゃ。
「そっか。……私達色々すれ違ってたんだ。でもこれでようやくすっきりした。ありがとう恭護。…式のことは他の人に引き継ぐね。さすがにそこまで神経図太くないから。じゃあ、これで。出よっか?」
よし。笑顔で言えたよね?
美羽が席を立とうとしたそのとき、彼に腕を掴まれた。彼の触れた所が必要以上に敏感になっている気がする…まるで全神経が掴まれた所へ集中しているかのように………
「ちょっ、待って。これで終わりにするつもりか?」
終わりにするも何も…もう過去のことじゃない⁉︎
「じゃあどうしろっていうの⁉︎ 恭護…結婚するんでしょう?」
ガシガシと頭を掻き何かを決心したような彼は
「それはっ…綾乃とは結婚しない。だって綾乃は俺の……姉だから。だから結婚するのは姉とその婚約者だよ。」
最後の方の声が小さくなったから私が聞き間違えたんだよね?
「え?…いま姉って聞こえたけど…私の聞き間違いだよね」
「いや、聞き間違いじゃない。綾乃は俺の姉だよ。」
半ばヤケになっているようだが、彼の表情は真剣そのもので。…それじゃあ綾乃さんがあのとき一緒にいた人が本物の婚約者ってこと?
「…ねえ、綾乃さんの本物の婚約者って背が高くてがっしりしていて優しそうなひと?」
一瞬驚いたような彼を見て確信した。あのときのあの人が本物の婚約者なんだと。でも…なんで綾乃さんの婚約者のフリをしていたの?
「そっか、そうだったんだ。綾乃さんはお姉さんだったんだ……」
これ以上彼に何を言えばいいのかわからない。