ねぇ、運命って信じる?

△▼△▼△▼△▼△▼ side美羽

彼から手渡された財布…見たいような見たくないような複雑な気持ちが混ざり合う。それでも確かめたい気持ちが上回り財布をおそるおそる開くと…そこには確かに1枚の写真が入っていた。少し古くなったその写真には信じられない人が写っていた。
「これ…わたし…」
恭護と初めてデートしたときに2人で一緒に撮った写真だった。
「そう。美羽の写真。…姉に引っ張られて初めて式場を訪れたときは心底驚いたよ…まさか美羽がいるなんて、夢にも思わなかったから。あのとき、とっさに書類の姉の名字の欄を竹田にしていて…そのあと何度も式場を訪れたのは、美羽のことがまだ気になったから。…卑怯だと思うけど美羽に俺のことを気にしてほしかったんだ。」
哀しげに揺らぐ彼の瞳に…真実に…心が揺らぐ。
「ばかぁ…わたし…ショックだったんだから。突然姿を消したあなたが目の前に現れてさらに隣には可愛い婚約者までいて…」
溢れ出した感情と涙がとまらない。
「美羽…もう手遅れかな?…もう間に合わないかな……もう一度やり直すことはできないか?」
恭護の提案は予想もしていなかった言葉で……本当にもう一度やり直すことなんて出来るのかな?
「ほん…とに…?私でいいの?」
「まだ間に合うなら。…美羽がいいの。…で返事は?」
それは過去に恭護から告白されたときと同じやりとりだった。
不安そうな彼の顔を見ていたら迷いはいつの間にか消え去っていた。…あぁ、彼も私と同じなんだ。不安がないわけじゃない…でも、恐れずにもう一度……信じてみたい。
「私でよければ……よろしくお願いします」
泣き笑いになりながらやっとその言葉を紡いだ。きっと大丈夫。恭護となら……
「よかった。断られるかと思った。」
ひさびさに見た恭護の笑顔に心臓が音を立てた。赤くなった彼女にそのあと彼から優しいキスの嵐がしばらく降り注いだ。


…ピロリン…
『俺は先に帰るから、ちゃんと戸締りして自宅へ帰ること。それと要報告な!じいさんにあれこれ勝手な話してもいいなら別だけど?笑』
奏くんからのメールに2人で苦笑いしながらLittle featherをあとにした。


今やっと、止まっていた時間が動きだした。そんな気がする…ここからまた始まる…

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