ねぇ、運命って信じる?

数日後
綾乃さんと、本当の婚約者だという竹田和樹さんが式場に挨拶にきて、”騙してごめんなさい。”と謝ると同時に結婚式の予約をして帰って行った。
やはり、大規模な式になるようで…みんな驚きながらも喜んでいた。私1人では手が回らないので詩織先輩と2人で担当することになった。

恭護とのことの説明が難しく詩織先輩と工藤に相談した…実は美羽の元彼でよりを戻したことを2人に話したときは相当驚いていた。工藤は”
だから敵意があるような目で見られてたのか”と1人納得していたがよくわからないのでスルーした。ひと通りの説明をしたら…工藤が”俺がみんなに上手いこと言おうか?”と名乗り出てくれたので、この機会に借りを返してもらうことにした。
工藤は彼が綾乃さんの弟で付き合いで式場に来ていたことと、綾乃さんの結婚式はSkymoreでやることになった。などを広めてくれた。
そして…”中原さんは美羽の元彼らしく再会して焼け木杭。”と信用できる子にうっすら噂を流されて外堀から埋められていることなど知らずに2人に感謝していた…。

ある日突然、佐山ちゃんに
「あの噂の写真は先輩だったんですね。」
と意味深な笑みで聞かれたが…一瞬、何のことか分からず戸惑い、とりあえず曖昧な態度でごまかした。すぐに、何か知っているだろう工藤を問い詰めると…これは詩織先輩が綾乃さんと2人で作戦を考えて工藤に噂を流させたことを白状した。…あの2人がタッグを組んだら最強だ。何か意図があってそうしたのだろうと思えばなかなか文句も言いづらい。そしていつの間にかみんなにも伝わっていて生暖かい目で見られることになった…

そんなある日、仕事が終わるのを見ていたかのようなタイミングで電話が鳴った。ディスプレイに表紙された名前を確認し急いで通話にする。
「もしもし、恭護?どうしたの?仕事忙しいんじゃなかったっけ…?」
『今、休憩中だから。それよりさ…美羽、明後日って休み?』
電話越しに聞こえる彼の声は少し疲れているように感じた。
「うん。休みだよ。…ねぇ恭護疲れた声してない?大丈夫なの?」
『へーき。美羽の声聞けたから。』
ボンッと音がしそうなほど一瞬で顔が赤くなった。また付き合いはじめてからというもの彼はひどく甘い気がする…それが嬉しい反面、すごく心臓に悪い。
『美羽…聞いてる?』
「あっ、ごめんね。聞いてるよ。」
『今度の休みに…あの並木道で待ち合わせしないか?』
並木道…か…。あれ以来何年も足を運んでないな……
「でも平日だよ?恭護仕事忙しいんでしょ?」
『大丈夫だから。…じゃあ11時に待ち合わせでいいか?』
「うん…わかった。」
もしまた彼が来なかったらと少し不安が頭をよぎったけど、それを察知したかのように…
『今度はちゃんと行くから。…だかや必ず待ってて?』
「わかった!じゃあ明後日ね。」
明後日か……恭護はもう忘れちゃったのかな?…私の誕生日なんだけどな。

本来なら休みではなかったけど、詩織先輩が
「あれっ?美羽…9月7日って誕生日でしょ?この前シフト代わってくれたじゃない?だからお返しね!」
ってシフトを代わってくれることになった。幸い担当の式も予約もなかったのでスムーズに交代することができた。…本当に詩織先輩には頭が上がらない。

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