好きだと言う前に
1始まりの音
何気なく、使用人を連れて外へ出た。
今日はすることも得にない、とても暇なのだ。
「おいクリス、あれはなんだ?」
「えっ?ああ、奴隷売買ですかね、行ってみますか?」
人だかりがあり、使用人のクリスに尋ねると、そう返された。
「ああ、少し興味がある。」
「では行きましょうか。」
人だかりに近づくと、そこにいたのは1人の少年だった。
「………っ……?」
トクン、と胸が高鳴る。
彼は服も髪もボロボロだった。
蒼い瞳には影がかかっていて、光がない。
でも、どこか寂しそうで儚げな彼を、私は綺麗だと思った。
「100!いや、150だ!!」
「300出すわ!!」
まわりの大人たちは、怖い顔でそう言っていた。
150万円?300万円?
…彼の価値はそんなものなのか。
金で人を買う、という現場には居合わせたこともないが…。
「…1500。」
「え?」
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