夜が来ない最後の1日
電話
テレビから流れる残酷な言葉
涙がこぼれ
力が抜ける
そうだ
あの子に あの子に
最後の言葉を
小さく四角い機械を
手に取る
電波
もしもし
震えた声が薄く 機械から漏れる
君は泣いているんだね
君の名前を呼ぶ
空の崩れる音と共に
君が
僕の名前を呼び返す
あぁ
君のために
僕は生まれてきたんだね
「君に会えてよかった」
空の青が
地に降り注ぐ
君の涙が
溢れる
「わたし…私も…」
「隣に居れてよかった」
「うん…うん…」
「愛してる」
「私も…大好きだった」
いつもの蝉の声が
君の声を
かき消し始めた
あぁ
もう
さよならの時間か
時間を追いかけるだけで
ここまで来てしまった
「じゃあ
また明日」
「…うん
…おやすみなさい」