love square~四角関係なオトナ達~
3週間が経過する頃になると、春流に繋がれていた管が少しずつ減り、ICUへの直接の面会も許されるようになった。


あたしはうすっぺらい手で春流の手をひたすら握り続ける。


───ピク、ン…


握った春流の左手が少し動いたような気がした。


「春流…?」


静かな小さい声で名前を呼ぶと、春流の目がうっすらと開く。


「待ってて、今、先生を…」


「…ぃちゃん」


「…?」


「ぴぃちゃん、行かない、で…」


呼吸器の中でゆっくりと言葉を紡ぐ春流。


目が覚めた…!!


あたしは力のないその手を握り、精一杯の笑顔を作る。


「頑張ったね?ありがとう、春流」


「ボク…」


「うん。ここは、病院。春流が無茶するから」


「そっか…」


ゆっくりと手をほどき、看護師さんに春流が目覚めたことを告げに行き戻ると、今度は春流があたしの手を求めた。


けど先生の処置が先で、一旦ICUから出されたあたしは、すぐにパパへ電話する。


「春流、起きてくれたよ」


「わかった。工藤を向かわせる」


それだけであたしはまたベッドへ戻り、先生から念のため1週間はICUで様子を見る旨の話を聞き、春流の手を握り続けた。
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