love square~四角関係なオトナ達~
恐怖→怒りへとやっとスイッチが変換されたあたしの頭は“社長”その一言でこの現状が一体何なのか、瞬時に悟る。


つまり。


カラっぽになった、この部屋をカラっぽにしたのは、今、この男が口にした“社長”あたしのパパのせい。


…あたしを連れ戻すつもりなんだ。


「帰らないから」


「私は今、言ったはずです。参りましょう、と」


「ヤ」


「では、どうなさるおつもりですか?」


「さっきまで一緒だったタケル呼んで家に泊めてもらうし。また新しい家借りて…」


「残念ですが明日以降、カードは使えません」


「はッ!?」


「差し止めるよう言われておりましたので、そのように手続きさせていただきました。よって、金の切れ目が縁の切れ目、3人の恋人、彼らもお金のないアクセサリー、つまり姫葵さんを必要とはなさらないか、と」


「ちょっ…!何言ってんのっ!?タケル達はあたしの事が好きで…!」


「そう言い切れますか?毎日お金と体を貢ぐだけの女は、どこにでもいます」


「あのねッ、仮にもあたしは社長の娘よッ!?偉そうな口きいて、何様のつもりよ!?」


「申し遅れました。私は工藤 琉偉(クドウ ルイ)、河野社長の弁護士兼秘書をしております。ここで押し問答もつまらない。参りましょう」


工藤と名乗った冷酷メガネ男はあたしの右手首を強く引き、ベランダの鍵を閉めた。
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