空色の君へ。〜最後に1度だけ、君の名前を呼ばせてください~
「ありがとうございます。」


鞄を頭の上から下ろしながら言った私に、上条くんは照れたように笑って頷いた。


それ以降会話がないまま、家の近くの少し急な坂まできた。


さっきまで大降りだった雨も少しおさまって、今はパラパラと落ちている程度だ。


何も言わずに歩いて来ちゃったけど、上条くんの家もこっちなのかな?


もし私に合わせて来てくれてるなら申し訳ないな…


「上条くんの家って、ここら辺なんですか?」


「…」


「上条くん?大丈夫ですか…?」


「…ん?あ、ああ、大丈夫。この頃運動不足みたいでさ、こういう坂でも息あがっちゃって。」

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