蝶が羽ばたくと
「私が死ねば、少しでも………」
「っ北野!!私が、間違っていた!」
ガクンッと、
膝を折ったのは安奈の担任だった。
「すまなかった。
だから、頼む。止めてく………」
「せんせー、」
そっと見上げた教員の目に移るのは
両手を大きく広げる安寿の姿だ。
黒く長い髪が、
一瞬………安奈に被った教員らは
後退る者、その場に座り込む者。
…………彼らに報復が出来た事を
確認した安寿は頬を緩ませる。
次は――――――――警察だ。
ここで私が死ねば、
ニュースで取り上げられる。
嫌でも、姉を乱暴した奴等は
捕まる事になるだろう。
勿論、調べなかった警察にだって
大きな傷が付くハズだ。
スピーカーで私を止める声が辺りに響くのを背後で聞きながら
安寿は安奈の担任にゆっくりと微笑んだ。
「謝っても、お姉ちゃんは………」
「北野っ!!」
「帰って来ないわ。」
ゆっくりと倒れた体が宙を舞う。
悲鳴や叫び声が聞こえた。
スローモーションだった。
ピカッと光が安寿を包み込む。
「お姉ちゃん――――――――」
安寿はそっと、目を閉じた…………。