天才怪盗が拾った少女
第2章
翌朝、俺はみさきの手を引いて倉庫に向かった。
「……!?」
倉庫の中に足を踏み入れると見覚えのある人物──
ラビットの代理人が。
どういうことだ!?
みさきの保護者がこの男!?
俺は1人で混乱していた。
だが、俺の正体がバレることはないはずだ。
こいつと会ったときには『乱魔』だったわけで。
『乱魔』の格好をしていたから、普段の格好から俺が『乱魔』だとわかるわけがない。
そう思い、恐る恐るその男に近付く。
「……あの……」
「はい……?あっ……!」
男はみさきを見ると、すぐに抱きついた。
「よかった……。無事だったんだね。心配したんだよ?」
わりとちゃんとした親みたいだ。
「じゃ、俺はこれで」
「あ、あの!」
「はい?」
「お名前、聞いても……?」
……ん?
なんか、違和感しかねーんだけど。
こいつ、『乱魔』に会ったときとキャラ違わね?
というか、名前だよな。
本名で問題ねーかな……
「成瀬です」
「成瀬さん、ありがとうございました。僕、住吉雪兎(すみよしゆきと)と言います」
やっぱ違う。
だが、このほうがしっくりくるのはなぜだろうか。
昨日のこいつのキャラは浮いてるような感じがしていた。
ってか、住吉って言うんだな。
じゃあ『住吉みさき』ってことか?
「それでは……」
すると、住吉がみさきの手を引いて倉庫を出ようとしていた。
「あ、はい」
みさきが振り返って俺に手を振ってくる。
……天使だ。
なんてな。