天才怪盗が拾った少女
「はぁ……」
空海が深いため息をついた。
これは、やってやるよ、というサイン。
「S、なにか情報は?」
「え?あ、えっと………」
さすが『乱魔』の仲間。
仕事が早い。
俺の仕事はまだだけど、今回は準備も手伝おう……
と、思ったのにな。
空海に「手伝うことあるか?」って聞いた瞬間睨まれて、「ない」って言い切られた。
てなわけで、おとなしく待ってるのが今の俺の仕事。
退屈だし、散歩にでも行くか。
「ちょっと出掛けてくるわ」
なんて声かけても、2人は集中して返事がなかった。
俺は近場の川沿いを歩く。
今回は絶対にミスは許されない。
俺のムダなプライドのせいであいつらを巻き込んだし、ラビットにバカにされっぱなしってのも気にくわない。
念入りにプランを立て、冷静に行動しねーと。
焦りは禁物。
それこそ、失敗しやすくなる。
そういうわけにはいかねぇ。
どこのどいつか知らねーけど、俺の脱出劇、お前の目に焼き付けてやる──
「おい、予告状はどうするか?」
俺はあれから1時間くらいして喫茶店に戻った。
「今回は謎解きふうで」
空海とSがまとめた資料に目を通しながら答える。
謎解きふうにするのは、ラビットの実力を知るため。
空海がつくる謎ってのは案外難しい。
だから、それを解き、完璧な警備態勢を取ったなら、多少は認めてやる。
そうじゃなかったらラビットなんか眼中にねぇ。
Sの情報を疑うわけではない。
だが、そうやすやすと信じられるわけがない。