天才怪盗が拾った少女
第4章
1ヶ月。
とにかく、単純なモノから盗んでいった。
世間では『乱魔が盗みを始めた!』って超大騒ぎ。
すげぇな、って思うよ。
でも、そうやって騒いだのもつかの間、もう反応はない。
逆に乱魔が盗むのは当たり前、みたいになってきたし。
今までのほうがおかしかったって言うやつも少なくない。
「怪盗って言ってるのになにも盗んでこなかったというのが乱魔だったけど、結局その辺の怪盗となにも変わらない」
だってさ。
ったく、なにも知らねぇくせに、知ったかぶりしてんじゃねーよ。
どいつもこいつもレベル低い。
まあ、俺も同じようなもんだけど。
だけど、ただ「乱魔が盗みを始めた」って思ってるだけで、「ある特定の人物のものを盗み続けている」とは思われてないらしい。
世間では、な。
警察にはもうバレてる。
俺の狙いが柏木冬馬だって。
そりゃそうだよな。
『ラビット』がいんだから、気付かねぇわけがねー。
だから、回を追うごとに盗むのが難しくなってる。
警戒されてるからな。
警備が厳しいんだよ。
ま、そんな中でも盗んでやるけど。
今はホントの『天才怪盗』だし。
俺には優秀な仲間がいるし。
怖いものなんてねぇ。
『乱魔、準備はいいか?』
今は言うまでもない。
仕事中だ。
小型無線機で空海が声をかけてくる。
「あぁ」
『……いくぞ』
空海の合図と同時に、建物の照明すべてが落ちた。
さあ、ショータイムの始まりだ!