天才怪盗が拾った少女
俺を含めて4人はその部屋に入った。
「柏木……!」
マジックミラー越しに柏木の姿があった。
見たとたん、怒りがこみ上げてくる。
『どうして成瀬優弥と咲を殺したんだ?』
取り調べを行っている刑事が尋ねた。
『誰か、知らない人に言われたんです……成瀬優弥を殺せ、と……あいつの一番弟子のお前なら簡単に殺せるはずだって……』
なんだそれ。
だから殺したって言うのか?
あり得ねぇ……
『断らなかったのか?』
『もちろん、断りました!でも、そしたら僕を殺すって言われて……怖くって……弱い人間で、ごめんなさい……』
『それはどんな人か覚えてるか?』
『覚えて、ないです……』
こんなの、ふりだしに戻ったのと同じじゃないか……
「一弥、お前はバカなのか?」
「は?」
俺の横に立っている三崎が偉そうに言ってきた。
「あれが嘘だ、というのがわからないのか?」
嘘……?
この証言が……?
「……なにを根拠に」
「15年も身を隠していたんだぞ。そんなやつが捕まったから急に話す、なんておかしいと思わないのか。それに、もしあれが本当だとしたら、あいつはとっくの昔に自首してるはずだ。悪いことをしたという罪悪感を感じているなら、な」
すっげぇ……
ってか、当たり前か。
俺らの能力をはるかに越えてんだから。
というか、もしそうなら、柏木には親父を殺そうという意志があったということか……?
だとしたら、咲は?
どうして咲まで……
『成瀬咲を殺したのは?』
『彼女を殺す気はありませんでした。もともと、成瀬優弥だけ、ということだったので……でも、彼にナイフを向け、殺そうとしたら急にその子が出てきて……間違って殺してしまったんです……』
そんな話が信じられるわけ……