樫の木の恋(上)
「三成、京へと行く手配は整っておるか?」
秀吉殿は京の治安維持や朝廷の事や人に会うなど、仕事で明日から京へと行くために十日間城を空けることになっていた。
お供につくのが数人の護衛と三成だった。
「ええ、既に終えております。」
「そうか、さすが仕事が早いな。」
そう言って秀吉殿はにっと笑ってから自分の部屋へと戻っていった。恐らく書き物があるのだろう。
自分も早く仕事を終えてしまおうと三成の横を通り過ぎようとしたとき、三成に腕を掴まれた。
「……?なんだ?」
「竹中殿、心配にならないのですか?」
「は?」
三成は手を離し、こちらを向き得意気な顔をした。
「明日から十日間殿はそれがしと京へと向かいます。」
「仕事だからな。」
「殿と共に泊まることになりますが、殿と二人きり…という状況を作ることは容易いのですよ?」
思わずそんな状況を想像してしまう。それが分かったのか三成は不敵ににやっと笑った。
普段笑わないくせにそういうときばかり笑うのだ。
「殿の唇、柔らかいのですか?」
「三成、殿に手を出すなよ。」
「殿が合意すれば問題は無いはずですよ。」
そう言ってまた去っていった。三成は本当に要注意人物だ秀吉殿はそんな軽い女子ではないから、恐らく大丈夫だと思うが。
しかし三成は顔も整っているし、秀吉殿も優秀な三成に目をかけている。
正直、相当不安だった。