樫の木の恋(上)


不安に駆られ、思わず秀吉殿の部屋へと向かう。

「おお、半兵衛。どうした?そんな怖い顔をして。」

秀吉殿はやはり書き物をしている最中だった。顔を上げこちらを見上げてくる顔を見ると最近あまり二人きりになれなかった寂しさが込み上げてくる。

「その、三成と…」

直前まで聞こうと思っていたのだが、こんな質問をしてしまったら秀吉殿に重いと感じられてしまうのではないか。そう思ったら言葉が出てこなかった。

「ん?三成がどうした?」

「あ、いえ。なんでもありませぬ。」

「そうか?それにしても三成は優秀じゃ。今浜城の建設にも大きく貢献してくれてるしな。」

書き物をしながら三成を褒める秀吉殿。そういえば三成に顔を赤くしたのは本当なのだろうか。前に三成に言われた事が気になってしまう。
嬉しそうに三成を褒める秀吉殿を見てると思わず不安になる。

「よしっ!ようやく終わった。」

書き物が終わり筆を置く秀吉殿がこちらを向き、不思議そうに首をかしげる。

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