樫の木の恋(上)
「ん!」
秀吉殿が手を伸ばし、声を上げる。それがなんなのか分からなくて、ただ秀吉殿を不思議そうに見つめるしかなかった。
「ん!」
何故か顔の赤くなる秀吉殿にやっぱりよく分からない。
「もう!何でわからん!来てって言っておるんじゃ!」
「あっ。」
恥ずかしそうにする秀吉殿が可愛くて、寝転がりながら引き寄せおでこをつける。
「私ばかり恥ずかしいではないか……。」
ゆっくりと頭を撫でてから頬に手を当てる。赤く染まるその顔は可愛くて我慢しきれず口付けをする。
口付けをしたあと包み込むように抱き締める。
「恥ずかしがってる秀吉殿はとても可愛らしいですよ。」
「うるさい…。」
「酷いのですね。それがしは十一日間寂しかったのに…秀吉殿は寂しくなかったのですね。」
そう言うと秀吉殿は顔をそれがしの胸に埋める。
「……そんな訳なかろう。」
照れながら、恥ずかしがりながらもそう言ってくれる
秀吉殿が可愛くて仕方がない。
しばらく抱き締めたままでいると、なんだか安心してきて三成の事を聞こうと思った。今なら何を聞いても大丈夫な気がしたから。
しかし秀吉殿は何度呼んでも返答がなかった。
ぱっと離れて見てみると秀吉殿は小さく寝息をたてながら寝ていたのだった。
疲れていたのだから仕方がない。
そのままだと忍びない上に、もうすぐ夕方になり陽が沈んでしまう。
ゆっくりと離れ、布団を出し整える。
それから秀吉殿をゆっくりと抱き上げ寝かせる。
前にもこんなことがあったなと懐かしく思いながらも、仕事をしようと思い秀吉殿の部屋から出た。