樫の木の恋(上)
「それにしても西美濃三人衆の調略のぉ。」
廊下を歩きながら先程大殿に命令された内容を思い返していた。でも確かに木下殿に行かせるのは一番得策だろう。
他の方々は威圧感が酷い。木下殿には威圧感は確かにあるが魅了される何かがある。
恐らく上手くいくのだろうが、西美濃三人衆と共にいた身として一応の状況を伝えておいた。
木下殿は喜んで状況や好みに至るまで全て聞いてくれ、三人を落とす算段を二人で考えていた。
しかしその時、ふと声をかけられた。
「木下殿、大殿がお呼びです。」
「すぐ行こう。」
すっと現れた小者が考えていた木下殿に静かに用を告げる。
先程まで木下殿はいたというのに、こんなにすぐ何の用なのだろうか。
しかし木下殿はなんの疑問も持たずに待っていてくれと言って大殿の元へと向かっていった。
「大殿は何のようで?」
歩いて行こうとした小者に用を聞こうとする。しかし小者はただ呼んでこいと言われただけだと告げる。
だが、よくあるのだと。