樫の木の恋(上)
「半兵衛と三成の事で喧嘩をしたのです。」
ぽつぽつと状況を話始めた秀吉殿。喧嘩について話を進めていた。
怒って口論になった事、それがしが三成に掴みかかったことなど全て話していた。
もう内容が終わったなと思っていたのに、秀吉殿の話が続いた。
「なるほどな。要は半兵衛が三成に妬いただけではないか。何故これほどまでにこじれている?」
「三成と二人になったときに、聞いたのです。」
「ほう、なにをだ?」
「半兵衛が…。」
秀吉殿が口をつぐむ。何を聞いたと言うのだ。そこがどうしても気になっていた。
「秀吉、話さんと城に帰れんぞ?」
「……半兵衛が女中と逢瀬を重ねている、と。」
「は…?」
思わず声が出てしまっていた。そんな事は一切していない。頭がぐるぐると回った後で、三成に嵌められたのだという考えにようやく至った。
「秀吉殿!それがしはそのようなこと!」
「半兵衛…少し黙っておれ。」
大殿にたしなめられ、威圧感に思わず黙ってしまう。
「秀吉は何故それを信じたのじゃ?理由があるのだろう?」
「…半兵衛が女中に、秀吉殿は抱けぬつまらぬ女子だから、と言っていた…と。大殿と半兵衛しか知り得ぬ事でしたので、信憑性は高いかと。」
大殿は前のめりに話を聞いていたが、秀吉殿が話終わり体を後ろの窓枠に寄りかかり腕を組んだ。
「なるほどな。それは確かに信じるかもしれん。」
「それがしはそのようなこと!」
そう口にすると大殿に再度止められてしまった。