樫の木の恋(上)


「その…いけなくは…ないが。」

まさかそんな風に秀吉殿が言うとは思っていなくて面食らってしまった。

「嬉しいですが、無理はしないでください。」

そう言うと秀吉殿は恥ずかしがりながらも反論する。

「無理など…してない。その…」

「…?」

おでこをつけながらも、もじもじとしている秀吉殿は目を合わそうとしない。

「半兵衛…となら、そういうこと…しても良いと思っておる…。」

「え…」

「っ…!い、今のは無し!わ、忘れてくれっ!」

おでこをつけていたのに、勢いよくそれがしの腕から逃れる秀吉殿。それをもう一度捕まえ、先程と同じようにおでこをつける。

「秀吉殿が可愛く言ってくれたのに、忘れられる訳ないではないですか。」

「う……!は、恥ずかしい…。」

「では、お言葉に甘えて。」

「えっ…」

秀吉殿の肩に手をかけ口付けをする。唇を離してからゆっくりと肩に置いた手を下げていき、胸へと手を当てる。
動かさずに手を当てるだけで様子を見てみた。

「…秀吉殿、嫌なら嫌と言ってください。」

秀吉殿は明らかに震えていた。怯えていたのだ。
答えない秀吉殿を見て、さすがにこれ以上は不味いと思い手を離そうとする。

しかし、それは秀吉殿によって遮られた。

胸に当てていた手を捕まれ、そのまま当てられたままになる。

「平気…じゃから。」

「震えているではないですか。無理はいけま」

「大丈夫じゃ!頼む…続けてくれ…。」

無理はいけないと言おうとしたら、秀吉殿に遮られる。




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