樫の木の恋(上)
しばらく抱き合った後、口付けを交わしてから秀吉殿が口を開く。
「半兵衛…聞いてくれるか?」
真っ直ぐにこちらを見据える秀吉殿は、戦の時のような覚悟が伺えた。ゆっくりと首を縦に振ると秀吉殿は少し笑った。
「最初は氏真に犯されていた。しかし、飽きたのだろうな。そのうち配下に私を犯させ始めたんだ。」
血が沸いてしまったんじゃないかというくらい熱くなる。しかし秀吉殿の話をしっかりと聞くために懸命に感情を抑えた。
「色んな所を舐められたり、男のものを一日に何度も入れられたり。男のものをしっかりとくわえなければ殴られ、あそこが濡れなければ爪を剥がされ。毎日、何人かを同時に相手をさせられた。」
震える秀吉殿の手を握り、ゆっくりと擦る。すると秀吉殿は礼をいいながら話を続けた。
「舌を噛みきって死にたいのに、猿轡がされていて死ねもしない。…地獄だった。」
「…秀吉殿…。」
「毎日中に出されていたから、誰の子とも分からぬ子を身籠った。」
「…。」
絶句の一言に尽きる。正直、頭が真っ白になった。
「それを懸命に伝えたのだが、面白がられただけだった。」
「は…?」
「身籠ったところで拷問などやめてもらえるはずもなく、殴られ蹴られ犯され…。そのうち私は流産した。」
がらがらと何かが心の中で崩れる音がした。それは自分の中で、というより秀吉殿の中で崩れているように思えた。
秀吉殿が消えてしまいそうな気がして、確かめるように抱き締める。
それほどまでに秀吉殿の傷が秀吉殿を覆っていた。