樫の木の恋(上)
「そんな顔をするな。」
「秀吉殿…生きていて…くだされ。」
強く抱き締めると、秀吉殿はよしよしと子供をあやすかのように背中を撫でてくれる。
「もう…死のうとなどせんよ。半兵衛という大事な人も出来てしまったしな。」
「今も、辛い…ですよね…?」
「まぁ…な。でも半兵衛がいてくれるから大丈夫じゃ。」
そういうとゆっくりと口付けをされた。秀吉殿の存在を確かめたくて、何度も口付けを交わした。
「ふふ…半兵衛、泣いておるのか?」
「そんなわけありませんよ。」
「しかし、今」
秀吉殿の口を塞ぎ、舌を忍ばせる。
月明かりに照らされた秀吉殿は綺麗で、儚くて。そこだけ異世界のような異様な雰囲気を放っていた。
守りたいと言ったら生意気だと怒られてしまうだろう。
「秀吉殿、死ぬまで共にいさせてくだされ。」
だから、こう口にした。