樫の木の恋(上)
戸を門前払いと変わらない感じで閉めようとすると、木下殿が足を戸の間に入れ、体を捩じ込んでくる。
すると勢いよく入ってきたせいか、木下殿は体勢を崩し自分へと倒れこんできた。
「す、すまぬ!竹中殿!」
自分の上に乗っかるような体勢になった木下殿の体に少しだけ違和感を感じた。
「…?竹中殿、大丈夫か?」
そう退かずに顔を覗き込んでくる木下殿の顔は、近くで見れば見るほど綺麗だった。
「あの…退いてもらいたいのですが。」
すると木下殿は退こうとせず、むしろ覆い被さるような体勢になり、にやっと口角を上げ笑った。
「竹中殿が首を縦に振るまで…退かん。」
悪意といたずら心が混じったその笑顔に、こちらは呆れた気分になってくる。このお方はこういう状況を自ら作り出したのだな、と関心させられていた。