未知の世界4
夜になり、幸治さんとお父さんが一緒に帰ってきた。
「ただいま。」
「あれ?あなた、今日はやごな病院だったの?」
とお母さんがキッチンから尋ねる。
「あぁ、やごな病院の心臓外科で少し遊んできた。」
え?遊んできた?
「よく言うよ。
朝病院に来たと思ったら、そのままオペに入ってるんだから。」
あきれ顔で幸治さんが言う。
「え?手術?」
私には信じられない。お父さんって、アメリカの医者だよね?
「はは、かなちゃんが驚いてるぞ。
大丈夫だよ、かなちゃん。
お父さんはね、日本での医師免許もあるから、こういうことはよくあるんだ。
ブラックな世界で働いてる訳ではないからね。
かなちゃんの手術ができたのも、同じ理由だよ。」
あ、そういうことなんだね。
それにしてもすごい、お父さん!!!
ニコニコした顔のお父さんを、憧れの眼差しで見ていると、突然顔付きが変わり、
「かなちゃん、術後の心音を聞かせてもらってもいいかな。」
と思ってもないことを言い出した。
つい条件反射で、座っていたソファから立ち上がり、後ずさりしていた。
「かな、逃げても無駄だぞ。」
同じように医者の顔になる幸治さん。
「い、いや、そうじゃなくて。
勝手に体が・・・・・・。」
苦しい言い訳・・・・・・。
半分は条件反射で、半分は私の意思。
さらに幸治さんに睨まれる。
「ごめんなさい・・・・・・。」
怖くて素直に謝った。
「ほんとに、かなちゃんは嫌いなんだな。診察が。」
いや、好きな人はいないでしょう。
こうして私は、お父さんの診察を受けることになった。