未知の世界4
お昼に早川先生と昼食中、昨夜幸治さんから聞いた森良子について話した。
「これからたくさんの子供たちを診ていくと思うけど、本当に子供って繊細。
だけど、打ち解けるのも早いんだよね。
難しいのは小学校高学年から高校生かな。一緒に遊べば仲良くなれるちびっ子たちとは違うんだよね。
心と体が一緒に成長してないこともあるし、心では素直に思ってても口に出る言葉は素直になれない。
そこをどうするか。
しかも彼女の場合は、家族の問題もあるけど、そこばかりは僕たちには入れない領域だからね。」
「確かに、小さい頃は素直だったのに、中学、高校となるに連れて、素直になれなかった気がします。
それでもちょっとしたことに大きく傷ついて、もうダメだと思ったときには取り返しのつかないことを・・・・・・。
思い出すと恥ずかしい・・・・・・。」
「ハハハ!懐かしいねっ!
そんなかなちゃんが、今では僕らと同じ医者だもんな。」
「ほんとですね・・・・・・(笑)」
「でも、何がかなちゃんを一番変えてくれたの?」
早川先生が私に尋ねる。
「う~ん、幸治さんの存在かと・・・・・・。
厳しくされてた時は、すねてばかりでしたけど、現実をたたき付けられて、それと向き合うようになれたとき、少しずつ気持ちが変わってきたと思います。
同情されて優しくされるのが嫌いでした。
でも優しさも求めてしまって。
難しい子供でしたね。」
と、笑って答えた。
「まぁ、環境が環境だったからね。
彼女もいつか分かってくれるといいけど。
午後から佐藤先生にも了解得て、会いに行ってみる?」
え?
「いいんですか?」
担当患者でないのに。
「もちろんだよ。担当してなくても、僕たちはいつ担当以外の子を診るか分からないし、いざ回診や急変で診ることになったときに、その子のカルテだけでなく人間性も知らないと。
担当してるしてないでなくて、小児科医全員で、患者さんを治していかないとね。」
ウインクしながら話す早川先生。
午後から逢いに行ってみよう!
と意気込んでいると、
「そのかわり、ちゃんと最後まで食べれたらねっ。」
と私の手元に残されたおかずを見た早川先生に釘を刺された。
「はい・・・・・・。」
上がってきたモチベーションが少し下がったけど、彼女に会うために少ない食事だけど、全て食べ終えることができた。