未知の世界4
お昼ご飯を早めに切り上げ、病室に顔を出しに行く。
相変わらずベッドのカーテンが閉まったままの良子ちゃん。
その前を通りすぎ、反対側のベッドにいる悠斗くんのところへ。
他の子は食事を終えているけど、利き手を怪我してる悠斗くんは、反対の手でフォークを持ちながら食事をとる。
「何とか食べれてそうだね。」
そう声を掛けると、手を止めて私を見る悠斗くん。
「少しずつ慣れてきました。
それと看護師さんが、この補助具を貸してくれて。」
手元のフォークを見ると、フォークにバンドが付けられている。
こういうものもあるんだ。
これから覚えていかないと。
「そうなんだね。もし手が疲れたり痛くなるようなことがあれば、看護師さんに食べさせてもらうこともできるから。」
「はい、でもさすがに恥ずかしいです。」
「ハハ、そうよね。」
思春期の男の子なら当然!
「ところで悠斗くん。思っていたよりも長い入院で驚いたんじゃない?」
「はい・・・・・・、実は。」
そういうとどこか暗い表情の悠斗くん。
「もっと早く退院したかった。」
「もしかして、部活とか?」
「はい・・・・・・。サッカーしてるんですけど、最後の大会には出られそうにないから。」
「この怪我だと厳しいわね。いつが大会?」
「5月下旬からスタートします。」
「そうなのね。それまでに退院できるといいんだけど・・・・・・。」
それから当たり障りない世間話をして、私は悠斗くんのベッドを離れた。
離れる際、悠斗くんの隣の窓際にいる未来ちゃんが、やけに静かにしていることが気になった。