未知の世界4
「かな、入るぞ。」
進藤先生に呼ばれて駆けつけてくれた幸治さんが、カーテンをあけて入ってきた。
ベッド沿いの椅子に座り、私を見る。
一息着いた後、口を開いた。
「ヤダッ!!!」
「えっ!?」
幸治さんが言葉を発する前に言う。
「絶対に嫌なんだから・・・・・・。」
困った人だって思ってるよね?
幸治さんの顔を見られない。
「言っただろ?前にも。
本当なら研修に耐えられる心臓ではなくなってきてるって。
喘息が悪くなってる今、心臓に負担をかけないように
少し休むしかないんだよ。」
「嫌っ!!!それだけは絶対に嫌だ。」
「わがまま言うなって!!!」
ドンッ!!!
「キャッ!」
私は怖くて頭を抱えた。
「ごめん、かな。」
慌てて謝る幸治さん。
ただ幸治さんが自分の太股に拳をぶつけただけなのに・・・・・・、そんなことで私は昔の辛い記憶を一瞬でも思い出してしまっていた。
「・・・・・・絶対に嫌なんだから。」
小さな声で言う。
「でもなぁ、かな。現に食事を摂れない時の方が多いだろ?それに・・・・・・」
一度幸治さんがためらう。
「昨日の夜だって、トイレで戻しただろ?」
「・・・・・・。」
知ってたんだ。
「今日、どのくらい昼食べれた?
ほとんど食べてないだろ?」
確信してる。食べてないこと。
今日の昼は、たけると一緒だった。
今日のようなことは研修始まってから、初めてのこと。
基本的に何か突発事案のあったときに、一人で何もできない研修医は食事であろうが何だろうと、指導員といるのが基本。
でも今日私が早川先生と別で食べたのは、イレギュラーなことであった。
だけど、たけるも幸治さんとイレギュラーなことだったとしたら。いや、こんな偶然はほとんどない。
っていうことは・・・・・・。
「かな、体を休めよう。」
「そうやって、皆して私をはめようとしてっ!!!」
「!?
はめる?
そんなつもりなんて全くない。」
自分がどんどんと興奮していくのがわかる。
押さえきれない。
「私は絶対に休まないから!」
最後に幸治さんの顔を見ると、眉間にシワを寄せて明らかに、困った顔をしている。
私のことを呆れた目で見ている。
「分かった・・・・・・。
好きにしろ。
その代わり、少しでも何かあればすぐに言うんだぞ。」
「好きにしろ」と見離された後、何かあれば言えって。
絶対に言わないんだから。
私は沈黙で返した。