未知の世界4

「かなちゃん、来週が健診だよね?」





幸治さんの少し後ろに進藤先生が立っている。






「は、はい・・・・・・。」






「こんなに残ってるのはどうしてかな?」  






怒りたい気持ちを必死に抑えながら、尋ねられた。







「あ、あの・・・・・・、その・・・・・・。






ご、ご飯を食べる時間がなかった時とか、その、







食欲のないときとか、に、






えっと・・・・・・






その、飲めなかった薬・・・・・・です。」







「で、この薬をどうしようと思ってたんだ?」    








厳しい突っ込みが、この緊張感漂う空気をさらに緊張させた。 


  




「え、えと・・・・・・。」









「ぅん?」







元ヤンだったのかと思うくらいの顔と言葉で、さらに威圧される。






  



「処分を・・・・・・。」









「えっ!?捨てようとしたの!?」









と、進藤先生が驚く。





  



私は小さく頷いた。










「っバカかっ!!!」








へぇっ!?







「飲めなかった薬は、健診の時に持っていくんだよ!






どれくらい残したのかどうか、主治医に知ってもらうために!







それに、次回薬を余分に出さなくて済むだろ?」







・・・・・・・・・・・・。






そうだったんだ。








「はぁ・・・・・・、心臓の悪い患者で、こんなに薬を飲まない人間は、この世でほとんどいないぞ・・・・・・。」







進藤先生も幸治さんの言葉に頷く。







さらに追い撃ちをかけるように、







「今、自分がどんな体だって分かってるのか?






無理矢理研修を続けさせてやってるんだぞ?






いつ倒れてもおかしくないんだぞ!」






幸治さんの声はどんどん上がっていった。







分かってる。自分がちゃんと飲まなかったこと、体調管理をしてなかったことも。







だけど、こんな言い方しなくても・・・・・・。






つらすぎて、言葉も涙も出ない・・・・・・。








ただ腕を掴まれた状態で、俯いているだけの私。











< 207 / 242 >

この作品をシェア

pagetop