未知の世界4
「思ってることがあったら言えよ。」
ベッドに近づいてくる幸治さん。
言いたいこと…あるんだけど。
言いたいんだけど…。
下を向く。
「ほら、こっち向いて。」
そう言われ、幸治さんの両手で顔を挟まれる。
「ちゃんと、ほら。」
「へぇっと…。
はぁのっ!」
う…、顔を挟まれてちゃんと喋れない。
「えっと…。」
話そうとすると、幸治さんは頬から手を離してくれた。
「本当は…
手術…、怖くて。
…手術だけじゃなくて、
その…、
入院してることだって、嫌で。
だって…、仕事をするために出勤してきたのに、そのまま入院だなんて…。
白衣着てたのに…入院服だなんて…。」
隣で椅子に座って、私を見て話を聞いてくれている幸治さん。
「そもそも…。
幸治さんも進藤先生も…
医者になって、この大学病院で働ければ、もし何か私にあっても大丈夫だって言ってくれたのに…。
結局、大丈夫じゃなくて…。
でも、それは、
自分がいけないってわかってます…
飲まないといけない薬を飲んでなくて。
吸引もまともにしてなくて、仕事中も廊下を走ることもあって。
それに…ご飯も食べてなくて。」
言葉も止まらないし、気づくと大粒の涙が頬を伝っていた。
「自分がいけないことしてるのに、
それなのに…
治らなくて…。
言われたとおりにしないから…それがいけないことなのに。
分かっているのにできない…。
それから…
手術のこと…
もし…手術室に入って…
二度と目が覚めなかったらって…
そういうことを考えれば考えるほど、どうしようもなく不安で。
そのことを、幸治さんや進藤先生に言えば良かったのに。
誰かと話してる時は、そんなこと考えたくない自分がいて…。」
もう…涙で…、前が見えない…
鼻も詰まってて、頭がボーッとする…
ギュッ!
幸治さん…
「辛かったな…
一人で悩んで…」
幸治さんのぬくもりを感じ、目を閉じた。
幸治さんの匂い、好き…。