隣の犯罪者?!
牛丼なんて久しぶりすぎる
隣でガツガツ食べてるけど
「名前」
「名前?俺の?」
「うん」
私も箸を割って食べ始めた
「後でな」
言いたくないのかそれ以上は喋ってくれなかった
牛丼を食べ終わると彼はバイクに乗った
後ろの席をポンと叩いたので乗っていいのだろう
バイクがはしりだすと街の灯りもキラキラと流れていく
駅からしばらくはしった住宅街
彼はアパート暮らしらしくボロボロのアパートだった
バイクを停めるなりシートを被せて錆びた外階段を登る
「送ってくれないの?」
「疲れてんだよ」
二階の角部屋の鍵を開ける
玄関の鍵を閉め電気をつけた
部屋は綺麗に片付けられていた
小さなテーブルに鍵を置くとシャツを投げ捨てた
引き締まった体を目の当たりしてしまい慌てて視線を外す
「ごめんなさい」
「おまえ男の体みんの初めて?」
「···ちょっと」
頬を両手で挟むようにして訊ねてきた
「離れてよ」
「キスしていい?」
「えっ···」
強引に重ねられた唇
潜り込んできた彼の舌にはピアスだろうか···
一度、離れてわざとらしく舌をべーっと出す
「正解ピアスだよ」
「シャワー借りていい?」
このままじゃ私がもたない
慌てて教えてもらったバスルームに逃げ込む
シャワーを捻って周りを見渡す
いつもと違って落ち着かない
シャワーを浴びていると突然ドアが開いた
「えっ···ちょっと」
「俺が突き落としたならどうする?」
ドアを閉めて浴槽の縁に腰かける
ジーンズ姿の彼···濡れちゃうよ?
「えっ···」
「なぁんてな」
「出てってよ」
「俺はコンビニに行ってくるから
なんか欲しいものある?
それと部屋の中、勝手に漁ったら殺しちゃうよ?子猫ちゃん」
根本的にヤバい人なんだぜったい
私は彼が外に出たタイミングを見計らって急いでシャワーを浴びて着替えた
帰ろう
外に出たのはいいけど大通りまではかなりある
どうしよう?
「なにやってんの」
ウソ
こんな短時間でコンビニなんて···
まさかウソ?
タバコを吸いながら近づいてくる
「なんで怯えてんの?」
「帰りたいんです」
もうダメと目を瞑った
「明日な」
「いまです」
「殺しゃしねぇよ
ついでに俺は殺人鬼じゃねぇし」
「へっ?」
「帰ります私」
「頑固だねあんた」
「あなたは人殺しです
だから名乗らない
私見たんです
あなたがニヤリと笑ってたの」
またニヤリと笑ってタバコを消した
「それ悪くないかもな」
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