溺れる恋は藁をも掴む
 ーー約束の土曜日ーー

 私はそわそわしながら、約束の時間を待った。

 いつもより丁寧に化粧し、髪は巻いて涼しげなアップにする。

 昨日選んだワンピースを着てみる。
淡いブルーのワンピース。
私の好きな色。
その上に、白いカーディガンを羽織る。
この組み合わせが好きなんだ。


 デブ時代は、お洒落に無縁な私が、何よりも羨ましかったのは、細い女性がセンスの良い服を着こなし、お洒落をして彼氏と街を歩く姿だった。

 今なら、その願いが少し叶う様な気がした。

 彼氏じゃないけど、好きだったアキにデートに誘われたんだから。

 今の私なら、着たい洋服が着れる!
アキと並んで歩いても、まるっきり不釣り合いには見えないだろう……?

 確かにアキは甘カワイケメン。

だけど……
『あんなイケメンにあのデブはないんじゃね?
彼氏、デブ専なんだよ』なんて陰口は叩かれないで済みそう。

 姿見に自分を映し、アキとの約束の時間まで、納得いく自分を作ろうと必死になれた。

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