溺れる恋は藁をも掴む
 部屋にあったソファに並んで座った。


 「緊張してる?」

 「うん」

 「なんか飲む?」

 「いっ‥‥今はいいかな‥‥」

 「なら、キスする?」

 「えっ!?」

 そう言った私の唇を塞ぐように、アキは唇を重ねる。

 フワッとした感触が伝わる。
チュッという感じのバードキス。

 「少し緊張ほぐれた?」

 「余計‥‥ドキドキしちゃ………」

 言葉が言い終わらないうちに、またアキが唇を重ねた。

 今度のキスは、唇を何度も合わせて、ジワジワと感触が残るほど濃厚なキスだった。

 

 うっ‥‥蕩ける‥‥‥蕩けちゃうよー!!



 恥ずかしくて、ずっと目を閉じたまま。

 アキは唇を離し、私の頬にそっと唇を添えた。

 目を開けたら、アキの顔がやたらに近い。

 アキの瞳は私を見つめる。

 アキの人柄を表すような、優しい瞳。
それでも、その奥に見え隠れする影。

 「シャワー浴びる?」

 「………うん」

「先に浴びてきなよ、華」

 アキが私を初めて名前で呼んだ。

 照れて、にやけ顔になる前に立ち上がる。

 「じゃあ、浴びてくる!」

 一言残してバスルームに、急ぎ足で向かう。

 赤面したにやけ顔がバスルームの洗面台の鏡に映り、見られなくて良かったと、そっと胸を撫で下ろした。
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