溺れる恋は藁をも掴む
 「誰が働いてお前たちを養ってやってるんだと思ってるんだ!!

 あっ!?

 何だ? その不満げな顔は?

 お前らの為に、面白くもない会社に行って、
毎日働いてやってんのに、その態度は何だ!!」


 酒を煽り、威嚇しながら、不満から出る怒りをぶつけているのが、親父。


 それに堪えて、肩を震わせ、背中に怒りを背負い、唇を噛み締めて、その醜態をずっと見せつけられてる母さん。


 物心ついた頃から、あいつの機嫌が少しでも悪くなると、些細な事をキッカケに喧嘩が始まった。

 喧嘩といっても、親父が一方的に怒鳴り散らすが大半。


 近寄りたくないほどの、殺伐とした中で、俺は、泣き喚く小さな弟を抱き締めていた。


 この時間が早く過ぎてしまうようにと、祈る気持ちで眺めているしかなかった。
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