溺れる恋は藁をも掴む
 「深いな‥‥
香澄と話していると、いろんな考え方があるんだって、しみじみ思うよ。

 悩んでいる自分が救われていくような、不思議なパワーも貰える」


 「華、
人は傷ついた分、逞しくなるんだよ。

 華も失恋して、自分のコンプレックスと向き合えたでしょ?

 それに克服もした。

 そういう華だから、目の前にアキ君が現れたんじゃないかな?

 偶然じゃなく、それは必然なのかもね。

 必要のない人は、決して、自分の目の前に現れない。

 必要でなくなった時に消えてゆくもんなのよ。

 心と身体に聞いてごらん?
アキ君は華に必要?」


 「会いたい‥‥
アキはどう思ってるか分からない。
 でも、私にはアキが必要」


 「なぁ〜んだ、答えは出てるじゃない!
 私に後押しして欲しかったのね。
なら、自分に素直になりなよ?」

 「うん」


 私の心は、香澄に後押しされた事で、迷いなく、動き始める。

 きっと、香澄に辞めときなさいと言われても、答えは決まっていたかもしれない。


 「あっ、華、ごめん、これから私、デートなんだ」

 「昆布君と?」

 「そうよ。
面倒臭いけど、肉じゃが食べたいんだって」

 「作ってあげるんだ?」

 「胃袋もガッチリ掴むのさ!」

 香澄は笑う。
笑うとなくなる垂れた目。
人を和ませる笑顔。
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