溺れる恋は藁をも掴む
 届いた枝豆を摘みながら、続きを語るアキ。

 「鬱陶しい顔をされんのは慣れたよ。
勝負はそこからだからさ!

 いかにその顔を変えて、聞く耳をこちらに向けるかだよ。

 だから、相手の話もちゃんと聞く。

 大事な保険だったらしいんだ。

 ご主人のお母さんが、小さな時からずっと掛けてきてくれて、社会人になってからご主人に引き渡したらしい。

 その頃なら最高の内容の保険なんだけどね。

 でも、いざ病気になったりした時の保障が薄かったり、入院した時に出る日額保障が少なかったりでね…

 その代わり、死亡した時の保障がやたら大きい。

 でもさ、今は医療が進化して、ガンだって、昔ほど難病でもなくなりつつある。

 それでもガンになる人は増えていて、バカ高い治療費を払わなきゃならない。

 その時、その時のニーズに合わせなきゃ、保険って意味がない事を話したんだ。

 一番大事な事は、万が一を考える事。

 一家の大黒柱がそうなった時の負担は、当然、伴侶に掛かってくる。
 そんな時、一番必要なのは金じゃない?」


 「そうだよね……」

 多分、アキじゃない人が語っていたら、聞く耳を持ちたくない話なのかもしれない。

 でも、好きな人が真剣に語る姿は、なんか見ていて嬉しい。
 

 聞き入る自分が居た。
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