溺れる恋は藁をも掴む
「アキのお父さん、
いいお父さんだったんだろうな‥‥」
アキのお父さんの好物がどんどん運ばれてきていた。
蛸ワサをつまみに生ビールを飲みながら、アキは答える。
「生きていた頃は、反りが合わなくて、ウザく感じたよ。
親父の事は、死んでからの方が考えるようになった。
死んでからじゃないと、分からない事や社会に出るまで気づけない事ばっかだったもん」
「ーーそうなんだーー」
「完璧な人間なんて居ないだろ?
どっかズレてる所があったりして、それが個性だったり、その人の味になるわけでさぁ……
でも、ズレが大きく生じると、自分ではどうにもならない程、軌道修正が出来なくなるんだよな……
挙句、周りが翻弄されるだろ?
『何考えてるの、付き合ってらんない』なんてさ……
心の中までは見えないから、結局、目に見えるところでその人を決めてしまうだろ?
ズレが大きいと、共感とか出来なくなってゆくんだよね…
親父は不器用な人だった。
不器用過ぎた真面目な人だった。
上手く息を抜けない人だった。
心の行き場所を失うくらい、真っ直ぐしか向けなかった人だったよ……」
いいお父さんだったんだろうな‥‥」
アキのお父さんの好物がどんどん運ばれてきていた。
蛸ワサをつまみに生ビールを飲みながら、アキは答える。
「生きていた頃は、反りが合わなくて、ウザく感じたよ。
親父の事は、死んでからの方が考えるようになった。
死んでからじゃないと、分からない事や社会に出るまで気づけない事ばっかだったもん」
「ーーそうなんだーー」
「完璧な人間なんて居ないだろ?
どっかズレてる所があったりして、それが個性だったり、その人の味になるわけでさぁ……
でも、ズレが大きく生じると、自分ではどうにもならない程、軌道修正が出来なくなるんだよな……
挙句、周りが翻弄されるだろ?
『何考えてるの、付き合ってらんない』なんてさ……
心の中までは見えないから、結局、目に見えるところでその人を決めてしまうだろ?
ズレが大きいと、共感とか出来なくなってゆくんだよね…
親父は不器用な人だった。
不器用過ぎた真面目な人だった。
上手く息を抜けない人だった。
心の行き場所を失うくらい、真っ直ぐしか向けなかった人だったよ……」